新日本無線へのTOBで日清紡に負けた村上ファンドですが、予想通り次の行動を起こしました。ただ、次の行動を起こしたのは予想通りだったのですが、行動内容は予想外でした。私が予想していたのは
−日本無線取締役への損害賠償訴訟を起こす
ということでした。日本無線は保有していた新日本無線株式を日清紡に売却しましたが、もし、村上ファンドが提示していた1株950円でのTOBに応じていれば、合計で10億円強を更に儲ける機会がありました。にもかかわらず、敢えて金額の低い方に売却をすることは株主価値の最大化に反する、ということですね。つまり、10億円強を儲ける機会を放棄した経営陣をキチンと取り締まれなかった取締役に対する訴えですね。
そういう損害賠償訴訟を予想していました、少なくとも私は。
でも、今回の村上ファンドの行動はこんなのです。
−日本無線監査役へ、日本無線の取締役を訴えるように促すレターを送った
「うん?なんじゃそれ?村上ファンドが訴えを起こしたわけじゃないのか…。なんだかインパクトに欠けるし、よー分からんな」というのがおそらく一般的な第一印象。日経新聞での取り扱いもめちゃ小さかったです。
でも、この件、私は驚愕しました。で、すごい怖くなったのでした。つまり、これまでの村上ファンドの行動は「株主、経営陣、取締役の役目とはこういうものだ!」というものの提唱的なところがありましたが、今回の行動はとうとう監査役に対して「あんたらの本来の役割というのはな!こういうことだよ!」と迫っているわけです。これが落ち着くと一通り会社法&コーポレートガバナンスに関してのレッスンがまとまるのではないかと思います。
で、私がどうして驚愕したかというと、今回の件次第では、今の時点で上場企業の監査役に就いている人たちはおそらく半数以上は次の決算期末をもってして退任された方が賢明になると思います。有価証券報告書の役員欄を見ると分かりますが、本当の意味での監査役の役目を理解した上で監査役に就任している人たちは少数派です。
年齢的にも結構高齢の方も多いので、村上ファンドのような存在から今後自分が日本無線の監査役と同じようなレターを受け取ったりすると、それこそその後の人生大変です。半分隠居状態が送れる、でも、なんだか監査役という役職だけはもらえるということで皆さんが喜んで就いてきた「閑職」、それがまさに監査役。でも、本来的には非常に重い役割を担っているのですね。
もう一度、経営陣、取締役、監査役、株主の関係を図示するとこういう関係です。この図は私はセミナーやら勉強会やらをするたびにお見せしているものなので、見飽きた人も多いかと思いますが…

取締役とは、本来は「経営陣が株主利益に準じて、正しい経営判断をしているかをモニターする人たち、つまり、取り締まる役」です。ただ、これが日本では「取締役=経営陣」という構図が長く続いたために、取締役本来の機能が働いていませんでした。それではさすがにまずい、ということで、行われたのが
1、社外取締役の導入
2、執行役員制度の導入
です。ニッポン放送の件でも、社外取締役と勤めていた弁護士や、現三洋電機会長の野中ともよ氏らが機能しなかったことはすでに学びましたよね。あとは、取締役のリスクが高まっていることも以前書きました。取締役と執行役員の違いはこちらで書きました。
ということで、今年は、「取締役と経営陣の分離」、「経営陣は株主利益最大化の代行者」という点に関してはある程度議論されてきたと思います。でも、上図でも分かるとおり、確かに監査役に関する議論はなされないまま2006年を迎えようとしています。「ま、監査役まではいいんじゃない?だってあれはお飾りだし」と思っている経営陣の方も多いのではないかと思います。
そこに今回メスを入れようとしている村上ファンド。
私が新聞記者だったら今回の件、大きな扱いで報じていたと思います。どなたかもコメント欄でプレスリリース一部を引用してくださっていましたが、村上ファンドからしれっと一つプレスリリースが出ていたぐらいですが(リリース原文はこちら)、これはマジで怖いですよ… 会社法、コーポレートガバナンスのあり方を追求する道としては避けて通ることができないでしょうが、村上ファンドをゾウに例えるとすれば、日本無線の監査役、そして他の上場企業の監査役の方々がアリのように思えてしまいます。。
どうしてそもそも上場企業が複数の監査役設置を義務付けているのか、もう一度考え直す意味でもいい機会だとは思います。
【新日本無線と村上ファンドの最新記事】









”商法が定める善管注意義務により、日本無線の取締役は、会社の業務執行が適正に行われるよう監視する義務を負っていたにも関わらず、その監視義務を怠ったため”
善管注意義務違反を問うている事だと思います、これの次にくるのは・・・
上記は通常の手続きです、取締役を訴える
場合でもまず監査役に通知と提訴要求が
行われます。監査役と取締役両方を同時に
起訴する場合は両方に通知を送ります。
(間違っていましたらご容赦ください)
監査役のための株主代表訴訟読本
ttp://www.kansa.or.jp/PDF/ns031010_dkhn.pdf
今回の村上さんのアクションは、「株主代表訴訟」以外の何ものでもありません。例によって、今回の日経の記事の書き方がこれまたよくないのですが、「株主代表訴訟」という言葉の字面が多くの誤解を招いているようです。株主代表訴訟は、商法上、まず、6ヶ月間株を継続保有する株主が、“会社”に対して取締役の責任を追及する訴えを提起するよう請求することが求められています(商法第267条1項)。ここでいう、“会社”というのは、「監査役」になるのです(商法第275条の4)。つまり、株主代表訴訟の最初のステップとしては、株主が「監査役さん、お宅の経営陣ひどいんで、取締役さんたちを訴えてくださいよぉ」ってお願いするところから始まるわけです。そして、監査役さんが行動を起こさない(訴えを提起しない)まま60日間何もしなければ、そこで初めて株主自らが取締役を相手取って訴えを提起できるようになるんですね(商法第267条第3項)。
というわけで、新日本無線と村上ファンドをめぐる攻防に関する保田さんの読みはあたってますよ。
保田です。すいません、すっかり正月モードでお返事できておりませんでした。
さて、結論的にはファンドでも株主代表訴訟は可能です。今までにもいくつかの事例が存在しました。
確かにファンドはあくまでファンドであり、法人格などを持たないのですが、ファンドを運営する責任母体が必ず存在しますので、その母体が責任を持ってファンドのリターン最大化のための行動をすることとなっております。
ある行為のお陰でファンドのリターンが最大かできない場合は、その運営母体はファンドのために行動を起こすことになるのですね。