2006年01月21日

株式分割とは?おさらい

ライブドア関連で、

「ライブドアマーケティングは1株を100株にするという、100分割の株式分割を行ったために株価が上がり…」

というお話がよくニュースなどでもありました。分かっている人には当然のお話なので、このエントリーはすっ飛ばしていただければと思いますが、おそらく

「なぜ株式分割をすると株価が上がるのだろう?」
「株価を上げたければ株式分割をすればいいの?」

と思っている方も少しはいるかな、と思って、「いまさら聞けない株式のコーナー」のエントリーとしてアップしておきますね。結論を先に書きますと、理論的には株式分割をしても株価は上がりません。ただ、おととしまでは日本の株式制度上の「不備」で、すっごい大量の株式分割をすると一時的に株価を上げることが可能でした。

去年より規制が変わって、今は株式分割をしても株価は上がらないようになりましたが、2004年当時はまだ規制が変わっていませんでしたので、すっごい大量の分割は株価を一時的に上げることができたのです。

私の本は、ケーキを例に株式分割を扱いましたので、今回も同じ要領で書いてみますね。

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まず、ホールで2,000円のケーキがあったとります。で、あなたは、ケーキ屋さんで「うわあ、すっごいおいしそう!」って思ったとします。でも、一人暮らしだから、ホール丸ごと1個はいらないですし、2,000円ってのも高くて買えない… せめて他の店で売っているようなショートケーキにしてくれて、安く買えないものかな、と思って店員さんに聞いてみました。

「すいませ〜ん。このイチゴのホールケーキってホールじゃなくて、ショートケーキでは買えませんか?」
「ごめんなさい、うちの店ではホールでしか売っていないんですよ〜」
「そうですかー。残念」

あなたはがっかりして隣にあったシュークリームを買って帰ります。一方、お店側ではその日の終了ミーティングでこんなやりとりがありました。

「店長。今日ご来店されたお客様のうち、ホールケーキじゃなくて、ショートケーキは売っていないの?って人がいました。どうしてうちのお店ではショートケーキにして売らないのですか?」
「いや、特に大きな理由はないのだけど、お客様がショートケーキが欲しいなら8等分にして、売ってみるか?もしかすると、同じようにショートケーキを欲しがっている方がいるかもしれないしね」
「ええ、きっとその方がいいと思います。うちのイチゴケーキはおいしいですので、一人でも多くの方に味わってもらいたいです。8等分ってことは、ショートケーキ1つの値段は2,000円÷8=250円ですね」

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翌日、ケーキ店の前には

『ショートケーキの販売始めました!』

って張り紙がありました。あなたは、翌日、仕事帰りに店の前を通って、その張り紙を見ます。

「わーい、ショートケーキ始めたみたいだ!早速買って帰ろう!」

ということで、あなたは250円を支払ってショートケーキを買って帰りました。他にも同じようにショートケーキを求めるお客さんは多かったみたいで、結局、お店ではたくさんのショートケーキが売れて、ホールケーキだけを扱っていた時よりもイチゴケーキの売り上げが上がりました。

長くなりましたが、株式分割もこれと同じです。株価が高いと個人投資家はなかなか株式を購入できません。ですので、企業は株主数増加のために株式分割を行い株価を低くして、個人投資家でも株式を購入しやすくします。例えば、1株100万円の株式があったとして、10等分すれば10万円の株式が10株できることとなります。

今までは、「100万円はちょっと大金だなあ」と思ってその株式を買わなかった人でも10万円から買うことができるようになるので、株主数が増えます。

株価は市場での売買を元に価格が決まります。たくさんの人に売買してもらってこそ適正な価格がつきます。これは築地市場みたいな市場(イチバ)と同じですが、例えばあなたが朝市で野菜を売っているとします。たくさんの人が「セリ」に来てくれると、

「ハーイ、じゃ、次、にんじん行くよー。一箱いくら?」
「1,000円!」
「1,100円!」

というようにセリは進みます。一方で、同じ朝市でもセリに来た人が一人だけだとすると、その人が

「100円!」

って言うと、あなたは大損をしてにんじんをその人に売りさばくか、売らずに持って帰るかのどちらかになります。商品を売らずに持って帰っても、何の特にもなりませんので、あなたは「もっとたくさんの人がセリに来てくれないかな」とぼやくわけです。

株価も同じで売買する人が少ないと、適正な価格はつきません。ということで、株式分割はいろんな意味で企業にとっても投資家にとっても有益なものなのです。

で、前置きが長くなりましたが、では、どういう「不備」が株式分割に存在したのかというと、株式分割を実行してから実際に株式が発行されるまでにタイムラグがあったのです。つまり、ケーキの例で行くと、ホールケーキをショートケーキにすると、ホントはすぐにショートケーキ8つが出てくるはずですが、まず初日にはショートケーキ1つだけが出てきます。で、残りのショートケーキ7つは、なぜか包丁が全然切れなくて、50日も経ってからショートケーキ7つが出てくるのでした。

すると、『ショートケーキ始めました!』という張り紙を出したのに、ショートケーキが1つしかないとあっという間になくなります。あっという間になくなるので、ショートケーキの値段が250円より高くなったとしても買う人が出てくるわけです。300円、350円、400円とドンドン値段は上がっていきます。

50日後に無事残り7つのショートケーキが出てくると、価格は元通り250円近辺まで下がってきますが、一時は400円まで上がった価格です。お客さんはショートケーキ1つが250円だったことはうろ覚えなのです。ですので、250円まで戻さなくても、300円ぐらいでも、買ってくれるようになります。

これが、以前の株式分割の実情でした。つまり、株券をいざ刷るのに50日間かかるので、その間はこのケーキの例のようなことが起こっていました。100分割は、株式の需給関係を意図的に逼迫させて、価格を吊り上げる効果があったのです。

なぜ、こんな不備が放置されてきたかというと、今までは多くの企業は株式分割は1株を1.2株にするとか、1.5株にする、2株にするぐらいのゆる〜いものばかりでした。100分割は想定の範囲外だった、わけですね。つまり、ホールケーキを半分にして販売するぐらいのものです。半分でも1,000円ですから買える人、買いたい人はそれほど増えません。でも、10等分だとお手ごろなので買いたい人が増えます。100等分だともっと増えます。まあ、ケーキを100等分すると、1つの切れ端はケーキなのか何なのか分からなくなりますが、株式の場合は100等分だととにかく理論的な株価が下がりますので、買いたい人が増えます。

でも、50日間は株式が交付されないので需給関係が歪んで、株価が変に高くなる。この仕組みに気付いた企業が100分割をして株価を上げようとしました。そして、そういう企業の意図に気付いた個人投資家もその株式の買占めに動いて一儲けしていた、というのが構図です。

当時から100分割をした企業には「株価をわざと引き上げるために100分割をやっているだろ!」という批判はいろんなところからありましたが、理論的には株式分割を行っても株価は変わらないわけですので、「は?あんたらファイナンスの勉強してきたほうがええよ。分割しても株価は変わらんのですわ。まったくアホばっかりやなあ」と反論できてしまったわけです。

こうなると、「不備」を正すように規制を変えるしかありません。ということで、去年に規制が変わって今では5分割までしかできなくなりました。また、分割後の株券発行までに50日かかるのは変わりませんが、当日から擬似株券を売買することで、分割後の株数で売買できるようになりました。したがって、大量の分割をすることによって株価を上げるというのは過去の思い出になったのですね。ライブドアマーケティングはその思い出の代表格。

って、めっちゃくちゃ長くなりました。すいません。ま、あくまでおさらいですから、ね。
posted by ちょう at 18:08| 東京 霧| Comment(4) | TrackBack(1) | 今さら聞けない株式のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは いつも欠かさず拝見してます。
とても判りやすい解説で、本当に勉強になります。

このポストで一つ気づいたことがありました。「いまさら聞けない」にちなんだ雑学みたいなもんです。

ショートケーキのショートってショートニングのショート。ケーキをサクサクさせる材料からきてるのだそうです。つまり丸ごとも、カットも苺のショートケーキはショートケーキなんだそうです。英語ではShortningと書くのでちょっと紛らわしいですね。
Posted by Mari at 2006年01月21日 21:51
わかっているわかっていないに関わらず、解説自体が楽しいので、ついつい読んでしまいます。

それにしても「ケーキを100等分すると、1つの切れ端はケーキなのか何なのか分からなくなりますが」というくだりには大笑い。虚を衝かれました。
ポーカーフェイス(文体?)ですね。
Posted by ohashi at 2006年01月22日 01:36
なるほどと感心しています。実は知人の会社が公開もしていないのに突然分割(5分割)をしていました。その3ヶ月後また、出資者を募って資本金を集めたようです。ただ、その時の株の額面は分割前の額のまま。分割前に出資した人は500株になっているとしたら同じ出資金で100株という状態で株主構成比率の資料を配っていたようです。株数が増えた分株価の額面が下がったわけですから、その後の出資者も500株ということにならないのがよくわかりません。教えてもらえたら嬉しいです。また、この目的はなんでしょうか??
Posted by TANI at 2006年03月08日 09:19
TANIさん

それは実質的には株価が5倍になったことを意味しますよね。経営者からしてみるとより有利な条件で資金調達ができることとなり、ひいては自社の企業価値が高まったことを意味します。ですので、経営者からしてみるとプラス。

出資者からしてみると、株価が5倍でもペイする投資かどうかを考えて、ペイすると思えば投資するということかと思います。

ベンチャー企業に投資するファンドとかをベンチャーキャピタルと呼びますが、このあたりについても近々ブログに書いてみようと思います。
Posted by ちょう at 2006年03月09日 01:24
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